ビット誤り発生の原因と熱雑音・アイパターン

デジタル通信では、様々な要因でビット誤り(Bit Error)が発生します。主な原因は以下の通りです:

熱雑音の物理的説明と数式

熱雑音は、抵抗体などの電子の熱運動によって生じるランダムな電圧変動です。
熱雑音の平均二乗電圧は次式で表されます:
$v_{n,\mathrm{rms}}^2 = 4kTR\Delta f$
ここで $k$ はボルツマン定数、$T$ は絶対温度、$R$ は抵抗値、$\Delta f$ は帯域幅です。
熱雑音はガウス分布(正規分布)に従い、受信信号の判定に影響します。

熱雑音の確率分布とビット誤り

熱雑音の確率分布(青:0判定、赤:1判定、判定閾値)
熱雑音によって信号が判定閾値を越えてしまうと、ビット誤りが発生します。
下図は0と1の信号に対する熱雑音の分布と判定例です。

アイパターンとビット誤り

アイパターンは、受信信号の波形を重ね合わせて表示したもので、信号品質やタイミングの余裕を視覚的に評価できます。
アイが大きく開いているほど、誤りが少なくなります。
アイパターン例(縦軸:電圧[V]、横軸:時間[ns])

アイが開いている場合

アイ開口部が広い場合、信号の立ち上がり・立ち下がりが急峻で、雑音や歪みが少ない状態です。
判定タイミングの余裕が大きく、誤り率が低くなります。
通信品質が良好な状態です。

アイが閉じている場合

アイ開口部が狭い(閉じている)場合、雑音や歪み、ジッタが大きく、信号の判定タイミングの余裕が小さくなっています。
この状態では誤り率が高くなり、通信品質が低下します。
実際の通信では、アイが閉じるとビット誤りが頻発します。

ビット誤り発生例(アイが閉じている場合)

下図はアイが閉じている状態で、実際にビット誤りが発生している様子です。
雑音や歪みが大きいため、判定閾値を誤って超えてしまい、誤ったビット値が検出されます(赤線で強調)。
このような状態では、通信の信頼性が大きく損なわれます。
アイパターンの中央部(アイ開口部)が広いほど、判定誤りが起こりにくくなります。
雑音や歪みが大きいとアイが閉じ、誤り率が増加します。
※グラフはSVGで描画しています。数式はMathJaxで整形。