A/D変換器(Analog-to-Digital Converter)は、アナログ信号をディジタル信号に変換する回路です。
連続的なアナログ電圧を、離散的なディジタル符号(2進数)に変換することで、マイコンやDSPでの信号処理を可能にします。
ディジタル出力 = (入力電圧 / 基準電圧) × (2n - 1)
n:分解能(ビット数), 基準電圧:フルスケール電圧
逐次比較型(SAR:Successive Approximation Register)A/D変換器は、2分探索法を用いて入力電圧に最も近いディジタル値を求める方式です。
8bit SARレジスタの各ビットパターンに対応するD/A出力電圧(基準電圧5V時):
ビット位置 | 重み値 | 電圧寄与分 | 累積電圧 |
---|
ビットパターン | 10進値 | 出力電圧 |
---|---|---|
00000000 | 0 | 0.000V |
10000000 | 128 | 2.500V |
11000000 | 192 | 3.750V |
11100000 | 224 | 4.375V |
11110000 | 240 | 4.688V |
11111111 | 255 | 5.000V |
出力電圧 = Σ (ビット値 × 重み) = Σ (bi × Vref / 2n-i)
bi: i番目のビット値 (0 or 1)
Vref: 基準電圧 (5V)
n: 総ビット数 (8bit)
学習のコツ:
フラッシュ型(並列型)A/D変換器は、複数のコンパレータを並列動作させることで、1クロックでの高速変換を実現します。
必要コンパレータ数 = 2n - 1
基準電圧間隔 = Vref / 2n
n:ビット数, Vref:基準電圧
項目 | 逐次比較型(SAR) | フラッシュ型 | パイプライン型 |
---|---|---|---|
変換速度 | 中速(nクロック) | 高速(1クロック) | 高速(連続) |
回路規模 | 小(1コンパレータ) | 大(2n-1コンパレータ) | 中(数段構成) |
消費電力 | 低 | 高 | 中 |
精度 | 高(16-18bit) | 中(6-8bit) | 中(12-16bit) |
コスト | 低 | 高 | 中 |
主な用途 | 汎用測定器 | 高速信号処理 | 通信・画像処理 |
8bit SAR型ADCで、クロック周波数が1MHzの場合の変換時間は?
6bit フラッシュ型ADCに必要なコンパレータ数は?
12bit ADC、基準電圧5Vの場合、1LSBの電圧値は?
高精度・低ノイズが要求される音響機器や精密測定器では、ΔΣ型ADCが主流になっています。オーバーサンプリングとノイズシェーピングにより、24bit以上の高分解能を実現。
中速・中精度領域ではパイプライン型が広く使用されています。SAR型とフラッシュ型の中間的な性能で、通信機器や画像処理システムに適用。
A/D変換器を理解したら、次はD/A変換器について学習しましょう。また、サンプリング定理やディジタル信号処理の基礎も重要な関連分野です。