⏱️ 単安定マルチバイブレーター
ワンショット回路の完全ガイド
🎯 この記事で学べること:
- 単安定マルチバイブレーターの基本原理
- ワンショットパルス生成の仕組み
- パルス幅の設計方法
- IC(74121, NE555)を使った実装
- 実際の応用例と設計のポイント
🔍 1. 単安定マルチバイブレーターとは?
動作確認はこちら
以下のリンクでのスイッチをクリックしている間、パルスを入力することができます。
動作確認
📚 基本定義
単安定マルチバイブレーター(Monostable Multivibrator)は、1つの安定状態を持つ回路で、トリガー信号により一定時間だけ状態が変化する回路です。
「ワンショット」とも呼ばれ、パルス生成、タイミング制御、遅延回路として広く使用されます。
🔄 無安定マルチバイブレーターとの違い
🌊 無安定マルチバイブレーター
- 安定状態なし
- 自動的に状態変化
- 連続的な矩形波生成
- 発振器として使用
⏱️ 単安定マルチバイブレーター
- 1つの安定状態
- トリガーで状態変化
- 一定幅のパルス生成
- タイマー・遅延として使用
⚙️ 2. 動作原理
🔧 基本回路構成
トランジスタ2個 + RC回路による単安定回路
📊 動作シーケンス
🔄 状態遷移図
安定状態 → トリガー入力 → 準安定状態 → 時定数経過 → 安定状態
- 安定状態: Q2=ON, Q1=OFF, 出力=Low
- トリガー入力: 負パルスがベースに印加
- 状態反転: Q2=OFF, Q1=ON, 出力=High
- コンデンサ充電: RC時定数で充電開始
- 自動復帰: Q2が再びONになり、元の状態に戻る
📈 3. 波形とタイミング
🎯 重要な特性
- リトリガブル: パルス出力中に再トリガー可能
- ノンリトリガブル: パルス出力中は再トリガー無効
- 最小パルス幅: 回路の遅延時間で決まる
- 最大パルス幅: 電源電圧と回路定数で制限
🔧 4. IC実装例
📱 74121 (TTL)
🔢 特徴:
- ノンリトリガブル
- 外付けRC必要
- 高速動作
- TTLレベル
📐 パルス幅: T = 0.7 × R × C
🎛️ NE555 (タイマーIC)
🔢 特徴:
- リトリガブル可能
- 広い電源電圧範囲
- 大きな出力電流
- アナログ動作
📐 パルス幅: T = 1.1 × R × C
🛠️ NE555を使った単安定回路
📱 5. 実際の応用例
⏰ タイミング制御
- LED点滅制御
- モーター起動遅延
- 警報音の持続時間
- 自動ドアの開放時間
🔄 パルス整形
- チャタリング除去
- パルス幅標準化
- 同期信号生成
- デバウンス回路
🎮 実用例:押しボタンのデバウンス回路
機械的なスイッチは接点の振動(チャタリング)により、1回の操作で複数のパルスが発生します。単安定マルチバイブレーターを使用することで、最初のパルスのみを検出し、一定時間後のチャタリングを無視できます。
🧮 6. 設計演習
🔧 問題3: IC選択
5Vで動作し、1μs〜100msの可変パルス幅が必要。適切なICは?
⚠️ 7. 設計上の注意点
🚨 よくある問題と対策
- 電源ノイズ: バイパスコンデンサを追加
- 温度特性: 温度係数の小さい部品を選択
- リトリガー: 必要に応じてリトリガー可/不可を選択
- 出力負荷: 駆動能力を考慮した設計
💡 設計のコツ
- 時定数選択: R は 1kΩ〜1MΩ、C は 100pF〜100μF
- 精度向上: 精密抵抗・低リーケージコンデンサ使用
- 安定化: 温度補償回路の追加検討
- 保護回路: 過電圧・逆電圧保護
📊 8. 特性比較表
項目 |
74121 |
NE555 |
CD4047 |
電源電圧 |
4.75V〜5.25V |
4.5V〜16V |
3V〜15V |
パルス幅範囲 |
30ns〜28s |
1μs〜数分 |
100ns〜1s |
出力電流 |
16mA |
200mA |
10mA |
リトリガー |
不可 |
可能 |
可能 |
精度 |
±5% |
±1% |
±2% |
🎓 9. まとめ
🎯 重要ポイント
- 単安定の特徴: 1つの安定状態、トリガーで一時的に状態変化
- パルス幅設計: RC時定数で決まる(T = 0.693RC)
- IC選択: 用途に応じてTTL/CMOS/タイマーICを選択
- 応用分野: タイミング制御、パルス整形、デバウンス
- 設計配慮: 温度特性、ノイズ対策、負荷能力
🚀 次のステップ
単安定マルチバイブレーターを理解したら、次は双安定マルチバイブレーター(フリップフロップ)について学習しましょう。これら3つのマルチバイブレーターを組み合わせることで、より複雑なディジタル回路を構築できます。