⏱️ 単安定マルチバイブレーター
ワンショット回路の完全ガイド

🎯 この記事で学べること:

🔍 1. 単安定マルチバイブレーターとは?

動作確認はこちら

以下のリンクでのスイッチをクリックしている間、パルスを入力することができます。

動作確認

📚 基本定義

単安定マルチバイブレーター(Monostable Multivibrator)は、1つの安定状態を持つ回路で、トリガー信号により一定時間だけ状態が変化する回路です。

「ワンショット」とも呼ばれ、パルス生成、タイミング制御、遅延回路として広く使用されます。

🔄 無安定マルチバイブレーターとの違い

🌊 無安定マルチバイブレーター

  • 安定状態なし
  • 自動的に状態変化
  • 連続的な矩形波生成
  • 発振器として使用

⏱️ 単安定マルチバイブレーター

  • 1つの安定状態
  • トリガーで状態変化
  • 一定幅のパルス生成
  • タイマー・遅延として使用

⚙️ 2. 動作原理

🔧 基本回路構成

トランジスタ2個 + RC回路による単安定回路

📊 動作シーケンス

🔄 状態遷移図

安定状態トリガー入力準安定状態時定数経過安定状態

  1. 安定状態: Q2=ON, Q1=OFF, 出力=Low
  2. トリガー入力: 負パルスがベースに印加
  3. 状態反転: Q2=OFF, Q1=ON, 出力=High
  4. コンデンサ充電: RC時定数で充電開始
  5. 自動復帰: Q2が再びONになり、元の状態に戻る

⏰ パルス幅の計算

T = 0.693 × R × C

T:パルス幅(秒), R:抵抗値(Ω), C:容量値(F)

📈 3. 波形とタイミング

📊 入出力波形

RC値を変更してパルス幅を確認:

10
1.0μF

パルス幅: 6.93ms

🎯 重要な特性

🔧 4. IC実装例

📱 74121 (TTL)

🔢 特徴:

  • ノンリトリガブル
  • 外付けRC必要
  • 高速動作
  • TTLレベル

📐 パルス幅: T = 0.7 × R × C

🎛️ NE555 (タイマーIC)

🔢 特徴:

  • リトリガブル可能
  • 広い電源電圧範囲
  • 大きな出力電流
  • アナログ動作

📐 パルス幅: T = 1.1 × R × C

🛠️ NE555を使った単安定回路

NE555による単安定マルチバイブレーター

🔧 NE555設計式

T = 1.1 × R1 × C1

トリガー:2番ピンに負パルス(VCC/3以下)

出力:3番ピンからパルス出力

📱 5. 実際の応用例

⏰ タイミング制御

  • LED点滅制御
  • モーター起動遅延
  • 警報音の持続時間
  • 自動ドアの開放時間

🔄 パルス整形

  • チャタリング除去
  • パルス幅標準化
  • 同期信号生成
  • デバウンス回路

🎮 実用例:押しボタンのデバウンス回路

機械的なスイッチは接点の振動(チャタリング)により、1回の操作で複数のパルスが発生します。単安定マルチバイブレーターを使用することで、最初のパルスのみを検出し、一定時間後のチャタリングを無視できます。

🧮 6. 設計演習

📊 問題1: パルス幅計算

R = 47kΩ、C = 2.2μFの単安定回路のパルス幅は?

🎯 問題2: 回路設計

10msのパルス幅が必要。C = 1μFの場合、R値は?

🔧 問題3: IC選択

5Vで動作し、1μs〜100msの可変パルス幅が必要。適切なICは?

⚠️ 7. 設計上の注意点

🚨 よくある問題と対策

💡 設計のコツ

📊 8. 特性比較表

項目 74121 NE555 CD4047
電源電圧 4.75V〜5.25V 4.5V〜16V 3V〜15V
パルス幅範囲 30ns〜28s 1μs〜数分 100ns〜1s
出力電流 16mA 200mA 10mA
リトリガー 不可 可能 可能
精度 ±5% ±1% ±2%

🎓 9. まとめ

🎯 重要ポイント

  1. 単安定の特徴: 1つの安定状態、トリガーで一時的に状態変化
  2. パルス幅設計: RC時定数で決まる(T = 0.693RC)
  3. IC選択: 用途に応じてTTL/CMOS/タイマーICを選択
  4. 応用分野: タイミング制御、パルス整形、デバウンス
  5. 設計配慮: 温度特性、ノイズ対策、負荷能力

🚀 次のステップ

単安定マルチバイブレーターを理解したら、次は双安定マルチバイブレーター(フリップフロップ)について学習しましょう。これら3つのマルチバイブレーターを組み合わせることで、より複雑なディジタル回路を構築できます。