関数スペクトル作図問題
このページでは、特殊関数や与えられた関数 $f(x)$ のフーリエ変換・スペクトルを作図する問題とその解説を扱います。関数は比較的簡単なもの(例:矩形波、三角波、指数関数、sin/cos など)を中心に出題します。
問題1:矩形関数のスペクトル
関数 $f(x)$ を次のように定義します:
$f(x) = \begin{cases} 1 & (|x| \leq a) \\ 0 & (|x| > a) \end{cases}$
フーリエ変換 $F(k)$ を求め、スペクトル $|F(k)|$ を作図せよ。
解説
矩形関数のフーリエ変換は、$F(k) = 2a \mathrm{sinc}(ka)$ となります($\mathrm{sinc}(x) = \frac{\sin x}{x}$)。
スペクトル $|F(k)|$ は $k=0$ で最大、$k$が増えると減衰し、ゼロ点が現れます。
$|F(k)| = |2a \mathrm{sinc}(ka)|$
下のグラフは $a=1$ の場合のスペクトル例です。
問題2:指数関数のスペクトル
関数 $f(x) = e^{-\alpha |x|}$($\alpha > 0$)のフーリエ変換 $F(k)$ を求め、スペクトル $|F(k)|$ を作図せよ。
解説
この関数のフーリエ変換は $F(k) = \frac{2\alpha}{\alpha^2 + k^2}$ となります。
$|F(k)| = \left|\frac{2\alpha}{\alpha^2 + k^2}\right|$
スペクトルは $k=0$ で最大、$|k|$ が大きくなるほど減衰します。
問題3:三角波のスペクトル
$f(x)$ を周期 $T$ の三角波とする。フーリエ級数展開の係数 $C_n$ を求め、振幅スペクトル $|C_n|$ を作図せよ。
解説
三角波のフーリエ係数は $C_n \propto \frac{1}{n^2}$ となり、$n$が大きくなるほど急速に減衰します。
$|C_n| \propto \frac{1}{n^2}$
下のグラフは $T=2\pi$ の場合のスペクトル例です。
問題4:ガウス関数のスペクトル
関数 $f(x) = e^{-x^2}$ のフーリエ変換 $F(k)$ を求め、スペクトル $|F(k)|$ を作図せよ。
解説
ガウス関数のフーリエ変換は $F(k) = \sqrt{\pi} e^{-k^2/4}$ となり、スペクトル $|F(k)|$ もガウス型です。
$|F(k)| = \sqrt{\pi} e^{-k^2/4}$
下のグラフは $|F(k)|$ の例です。
問題5:サイン関数のスペクトル
関数 $f(x) = \sin(\omega_0 x)$ のフーリエ変換 $F(k)$ を求め、スペクトル $|F(k)|$ を作図せよ。
解説
サイン関数のフーリエ変換は $F(k) \propto \delta(k-\omega_0) - \delta(k+\omega_0)$ となり、スペクトルは $\pm \omega_0$ にピークが現れます。
$|F(k)|$ は $k=\pm \omega_0$ でピーク
下のグラフは $\omega_0=2$ の場合のスペクトル例です。
問題6:矩形波のスペクトル(周期関数)
$f(x)$ を周期 $T$ の矩形波とする。フーリエ級数展開の係数 $C_n$ を求め、振幅スペクトル $|C_n|$ を作図せよ。
解説
周期矩形波のフーリエ係数は $C_n \propto \frac{1}{n}$ となり、$n$が大きくなるほど減衰します。
$|C_n| \propto \frac{1}{n}$
下のグラフは $T=2\pi$ の場合のスペクトル例です。
※グラフは例示です。実際の計算や描画はJavaScriptで実装できます。
【補足解説】sinc関数と矩形波の関係
sinc関数の定義
$\mathrm{sinc}(x) = \frac{\sin x}{x}$
sinc関数は、信号処理やフーリエ解析で重要な役割を持つ関数です。原点で $\mathrm{sinc}(0) = 1$ となり、$x$ が大きくなると振動しながら減衰します。
sinc関数と矩形波のフーリエ変換ペア
1. 矩形波をフーリエ変換するとsinc関数になる
例えば、幅 $2a$ の矩形関数 $f(x) = 1$ ($|x| \leq a$) をフーリエ変換すると、周波数領域でsinc関数 $F(k) = 2a\,\mathrm{sinc}(ka)$ が現れます。
$f(x) = \begin{cases} 1 & (|x| \leq a) \\ 0 & (|x| > a) \end{cases}$ のフーリエ変換 $F(k) = 2a\,\mathrm{sinc}(ka)$
2. sinc関数をフーリエ変換すると矩形波になる
逆に、sinc関数 $f(x) = \mathrm{sinc}(Kx)$ をフーリエ変換すると、周波数領域で幅 $2K$ の矩形関数 $F(k)$ が現れます。
$f(x) = \mathrm{sinc}(Kx)$ のフーリエ変換 $F(k) = \begin{cases} 1 & (|k| \leq K) \\ 0 & (|k| > K) \end{cases}$
このように、sinc関数と矩形波はフーリエ変換で互いにペアとなる関数です。
時間領域の有限幅(矩形)→周波数領域の広がり(sinc)、時間領域の広がり(sinc)→周波数領域の有限幅(矩形)という対応が生じます。
まとめ:
- 時間領域の矩形関数をフーリエ変換 → 周波数領域のsinc関数
- 時間領域のsinc関数をフーリエ変換 → 周波数領域の矩形関数
この関係は信号処理や通信工学で非常に重要です。