📡 アンテナ工学 問題演習

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問題 1
基礎レベル

アンテナ利得について

アンテナ利得が10dBiのアンテナがある。このアンテナの利得を電力比で表すとどれくらいになるか。

参考式: $$G_{\text{dBi}} = 10 \log_{10} G_{\text{linear}}$$ $$G_{\text{linear}} = 10^{G_{\text{dBi}}/10}$$
A. 5倍
B. 10倍
C. 20倍
D. 100倍
💡 ヒント: dBiからリニア値への変換では、10を底とする指数関数を使います。10dB = 10^1 = 10倍です。

📝 解説

正解:B. 10倍

アンテナ利得のdBi表記からリニア値への変換:

$$G_{\text{linear}} = 10^{G_{\text{dBi}}/10} = 10^{10/10} = 10^1 = 10$$

したがって、10dBiのアンテナの利得は電力比で10倍になります。

dBiは等方性アンテナ(理想的な点アンテナ)を基準とした利得の表現です。

dB変換の基本公式:
$$\text{dB値} \rightarrow \text{リニア値:} \quad 10^{\text{dB}/10}$$ $$\text{リニア値} \rightarrow \text{dB値:} \quad 10 \log_{10}(\text{リニア値})$$
問題 2
標準レベル

アンテナの指向性について

半波長ダイポールアンテナの3dBビーム幅はおよそどれくらいか。また、指向性Dはどの程度になるか。

A. 3dBビーム幅: 60°, 指向性: 1.64
B. 3dBビーム幅: 78°, 指向性: 1.64
C. 3dBビーム幅: 90°, 指向性: 2.0
D. 3dBビーム幅: 120°, 指向性: 1.0
💡 ヒント: 半波長ダイポールは基本的なアンテナです。指向性は約1.64(2.15dBi)で、E面での3dBビーム幅は約78°です。

📝 解説

正解:B. 3dBビーム幅: 78°, 指向性: 1.64

半波長ダイポールアンテナの特性:

  • 3dBビーム幅(E面):約78°
  • 指向性D:1.64 ≈ 2.15dBi
  • 放射抵抗:約73Ω
  • 効率:理想的には100%

指向性は等方性アンテナと比べて、どれだけ特定の方向に電力を集中できるかを表す指標です。

指向性とビーム幅の関係:
$$D = \frac{4\pi}{\Omega_A}$$ ここで、$\Omega_A$ は実効ビーム立体角 [sr]
半波長ダイポールでは:$D = 1.64$ (2.15dBi)
問題 3
応用レベル

八木アンテナの設計について

3素子八木アンテナ(反射器、駆動素子、導波器)を設計する場合、各素子の長さと間隔について正しい記述を選びなさい。周波数は100MHzとする。

参考: $$\lambda = \frac{c}{f} \quad \text{where} \quad c = 3.0 \times 10^{8} \text{ m/s}$$
A. 反射器 > 駆動素子 > 導波器、間隔は0.1λ程度
B. 反射器 > 駆動素子 > 導波器、間隔は0.25λ程度
C. 導波器 > 駆動素子 > 反射器、間隔は0.25λ程度
D. 導波器 > 駆動素子 > 反射器、間隔は0.5λ程度
💡 ヒント: 八木アンテナでは、反射器が最も長く、導波器が最も短くなります。素子間隔は通常0.2λ~0.3λ程度です。

📝 解説

正解:B. 反射器 > 駆動素子 > 導波器、間隔は0.25λ程度

八木アンテナの基本設計原則:

  • 反射器: 約$0.52\lambda$(最長)
  • 駆動素子: 約$0.5\lambda$(半波長)
  • 導波器: 約$0.45\lambda$(最短)
  • 素子間隔: $0.2\lambda$~$0.3\lambda$(最適は約$0.25\lambda$)

100MHzの場合:

$$\lambda = \frac{3.0 \times 10^{8}}{100 \times 10^{6}} = 3.0 \text{ m}$$

この設計により、前方に鋭い指向性を持つアンテナが実現できます。

八木アンテナの利得:
$$G \approx 10 \log_{10}(0.2 \times N) \text{ [dBi]}$$ ここで、$N$ は素子数
問題 4
記述問題

アンテナの相互関係について

アンテナの送信効率と受信効率の関係(相反定理)について説明し、なぜ同じアンテナが送信と受信の両方に使用できるのかを200字程度で述べよ。

📝 模範解答

相反定理(Reciprocity Theorem)の数学的表現:
$$\vec{E}_1(\vec{r}) \cdot \vec{J}_2(\vec{r}) = \vec{E}_2(\vec{r}) \cdot \vec{J}_1(\vec{r})$$

ここで、$\vec{E}_i$は電界、$\vec{J}_i$は電流密度(i=1,2は送信・受信状態)

アンテナの相反定理により、任意のアンテナの送信特性と受信特性は同一である。これは、アンテナの物理的構造と電磁界の境界条件が送受信で変わらないためである。具体的には、送信時の指向性パターン、利得、インピーダンス特性が受信時にも同じ値を示す。したがって、送信用に最適化されたアンテナは自動的に受信用としても最適な特性を持つことになり、同一アンテナでの送受信が可能となる。この原理により、通信システムの設計が大幅に簡素化されている。

問題 5
計算問題

フリスの伝達公式の応用

以下の条件で無線通信を行う場合の受信電力を求めよ。

  • 送信電力:Pt = 10W
  • 送信アンテナ利得:Gt = 6dBi
  • 受信アンテナ利得:Gr = 3dBi
  • 周波数:f = 1GHz
  • 距離:d = 10km
  • その他の損失は無視する
フリスの伝達公式: $$P_r = P_t G_t G_r \left(\frac{\lambda}{4\pi d}\right)^2$$

$P_r$: 受信電力, $P_t$: 送信電力, $G_t$: 送信アンテナ利得,
$G_r$: 受信アンテナ利得, $\lambda$: 波長, $d$: 距離

📝 解答例

計算手順:

1. 波長の計算:

$$\lambda = \frac{c}{f} = \frac{3.0 \times 10^8}{1 \times 10^9} = 0.3 \text{ m}$$

2. 利得のリニア変換:

$$G_t = 10^{6/10} = 10^{0.6} = 3.98$$ $$G_r = 10^{3/10} = 10^{0.3} = 2.0$$

3. フリスの公式適用:

$$P_r = P_t G_t G_r \left(\frac{\lambda}{4\pi d}\right)^2$$ $$P_r = 10 \times 3.98 \times 2.0 \times \left(\frac{0.3}{4\pi \times 10^4}\right)^2$$ $$P_r = 79.6 \times \left(\frac{0.3}{125,664}\right)^2$$ $$P_r = 79.6 \times 5.71 \times 10^{-12}$$ $$P_r = 4.54 \times 10^{-10} \text{ W} = 0.454 \text{ nW}$$