📊 第10章:スミスチャート

🎯 この章で覚えること

反射係数とインピーダンスの関係を図的に表現するスミスチャートの使い方を覚えよう!
高周波エンジニアの必須ツールです。

🔍 スミスチャートとは

複素平面上に反射係数とインピーダンスの関係を図示したチャートです。P.H.スミス博士が1939年に発明しました。

🎯 スミスチャートの基本構造

🔵 単位円
|Γ| = 1 の境界
受動負荷の範囲
🔴 抵抗円
r = 一定の軌跡
横軸に接する円群
🟢 リアクタンス円
x = 一定の軌跡
(1,0)を通る円群
⚡ 中心点
Γ = 0, z = 1
完全整合点
スミスチャート(基本構造) |Γ| = 1 実数軸 虚数軸 中心 (Γ=0, z=1) 開放 (Γ=1) 短絡 (Γ=-1) r=2 r=5 r=1 r=10 +jx -jx

スミスチャートの基本構造:抵抗円(赤)とリアクタンス円(緑)

💡 なぜ円になる?
反射係数 $\Gamma = (z-1)/(z+1)$ を変形すると、
$r = $ 一定 または $x = $ 一定 の条件で円の方程式になります!
これが数学的な美しさです。

📐 座標系の変換

反射係数平面(Γ平面)

$$\Gamma = \Gamma_r + j\Gamma_i$$
$\Gamma_r$:実部、$\Gamma_i$:虚部

極座標表示:$$\Gamma = |\Gamma|e^{j\theta}$$

正規化インピーダンス平面(z平面)

$$z = r + jx$$
$r$:正規化抵抗、$x$:正規化リアクタンス

変換式:$$\Gamma = \frac{z-1}{z+1}$$
逆変換:$$z = \frac{1+\Gamma}{1-\Gamma}$$

📏 チャートの読み方

🎯 特別な点

🔄 円の意味

📊 スケール

🔧 チャートの使い方

📍 基本的な使用手順

1. インピーダンスのプロット

  1. Z_L を Z₀ で割って正規化:z = Z_L/Z₀
  2. r = Re(z), x = Im(z) を求める
  3. 抵抗円とリアクタンス円の交点にプロット

2. 反射係数の読み取り

  1. プロット点と中心の距離が |Γ|
  2. プロット点と正の実軸のなす角が arg(Γ)
  3. 径方向のスケールから VSWR を読み取り

3. 線路上での変化

  1. プロット点を中心に円弧を描く
  2. 時計回りに回転(負荷から電源方向)
  3. 360° = λ/2 で元の位置に戻る

⚡ 実用的な応用

🛠️ スミスチャートの応用例

1. インピーダンス整合設計

2. フィルタ設計

3. アンテナ解析

📊 練習問題

問題1:50Ω系で Z_L = 25 + j25 Ω の負荷の反射係数をスミスチャートを使わずに計算せよ。

解答:
z = Z_L/Z₀ = (25 + j25)/50 = 0.5 + j0.5
Γ = (z - 1)/(z + 1) = (0.5 + j0.5 - 1)/(0.5 + j0.5 + 1)
= (-0.5 + j0.5)/(1.5 + j0.5) = (-0.5 + j0.5)(1.5 - j0.5)/((1.5)² + (0.5)²)
= (-0.75 + j0.25 + j0.75 + 0.25)/(2.5) = (-0.5 + j1)/2.5 = -0.2 + j0.4

答え:Γ = -0.2 + j0.4
問題2:上記の負荷から λ/8 だけ電源側に移動した点でのインピーダンスを求めよ。

解答:
λ/8 移動 = 45° 時計回り回転
Γ(λ/8) = Γ × e^(-j2β×λ/8) = (-0.2 + j0.4) × e^(-jπ/2)
= (-0.2 + j0.4) × (-j) = -j(-0.2) + (-j²)(0.4) = j0.2 + 0.4 = 0.4 + j0.2
z = (1 + Γ)/(1 - Γ) = (1 + 0.4 + j0.2)/(1 - 0.4 - j0.2) = (1.4 + j0.2)/(0.6 - j0.2)
≈ 2.67 + j1.33

答え:z ≈ 2.67 + j1.33
🎯 スミスチャート使用のコツ
• 最初は簡単な値(z = 2, z = j1 など)で練習
• 対称性を活用(負のリアクタンスは下半分)
• 特別な点(短絡、開放、整合)を覚える
• 回転方向を間違えない(時計回り = 電源方向)
• 精度を上げるには大きなチャートを使用

🔥 テストで狙われるポイント