🔄 第6章:電磁波の反射・屈折

🎯 この章で覚えること

電磁波が異なる媒質の境界に入射したときに起こる反射・屈折現象を理解しよう!
境界条件とブリュースター角が重要ポイントです。

🌊 反射・屈折現象とは

電磁波が異なる媒質の境界面に入射すると、一部は反射し、一部は屈折して透過します。

電磁波の反射・屈折 境界面 媒質1 (n₁, Z₁) 媒質2 (n₂, Z₂) 法線 入射波 反射波 透過波 θᵢ θᵣ θₜ スネルの法則 反射: θᵢ = θᵣ 屈折: n₁sin θᵢ = n₂sin θₜ Pᵢ Pᵣ Pₜ

境界面での電磁波の反射・屈折現象

💡 身近な例
• 鏡での光の反射
• 水面での光の反射
• 水中の物体が曲がって見える屈折
• 虹(光の分散)
• 携帯電話の電波の建物での反射

📋 境界条件

電磁界が境界面でどのように振る舞うかを決める4つの基本条件です。

🔥 4つの境界条件

1. 電界の接線成分の連続性

E₁t = E₂t

境界面に平行な電界成分は連続

2. 磁界の接線成分の連続性

H₁t = H₂t

境界面に平行な磁界成分は連続

3. 電束密度の法線成分の連続性

D₁n = D₂n

境界面に垂直な電束密度成分は連続

4. 磁束密度の法線成分の連続性

B₁n = B₂n

境界面に垂直な磁束密度成分は連続

💡 覚え方
接線成分:E、Hが連続
法線成分:D、Bが連続
「ED、HB」と覚えよう!

📐 スネルの法則

反射角と屈折角を決める基本法則です。

反射: $\theta_i = \theta_r$
屈折: $n_1 \sin \theta_i = n_2 \sin \theta_t$

$\theta_i$:入射角、$\theta_r$:反射角、$\theta_t$:屈折角
$n_1, n_2$:屈折率 ($n = \sqrt{\varepsilon_r\mu_r}$)

⚡ 偏波による違い

反射・屈折の特性は偏波の方向によって異なります。

🔴 平行偏波(P偏波)

TM波、p-polarized
電界が入射面内にある偏波
(入射面:入射光線と境界面の法線を含む面)

🔵 直交偏波(S偏波)

TE波、s-polarized
電界が入射面に垂直な偏波
(ドイツ語のsenkrecht「垂直」から)

📊 フレネル係数

反射率と透過率を定量的に表す係数です。

S偏波(TE波)の場合

反射係数: r_s = (η₂cosθᵢ - η₁cosθₜ)/(η₂cosθᵢ + η₁cosθₜ)

透過係数: t_s = 2η₂cosθᵢ/(η₂cosθᵢ + η₁cosθₜ)

P偏波(TM波)の場合

反射係数: r_p = (η₁cosθᵢ - η₂cosθₜ)/(η₁cosθᵢ + η₂cosθₜ)

透過係数: t_p = 2η₂cosθᵢ/(η₁cosθᵢ + η₂cosθₜ)
💡 記号の説明
• η₁、η₂:各媒質の波動インピーダンス
• cosθₜ = √(1 - (n₁/n₂)²sin²θᵢ)
• |r|²:反射率、|t|²:透過率

⭐ ブリュースター角

P偏波の反射がゼロになる特別な入射角です。

🎯 ブリュースター角の定義

tan θ_B = n₂/n₁

θ_B:ブリュースター角
この角度でP偏波を入射すると、反射がゼロ!

📝 ブリュースター角の特徴

  • P偏波の反射係数が r_p = 0 になる
  • 反射光は完全にS偏波になる
  • 反射光と屈折光が垂直(θᵣ + θₜ = 90°)

📱 ブリュースター角の応用

  • 偏光サングラス:反射光(S偏波)をカット
  • レーザー:ブリュースター窓で損失を最小化
  • 偏光板:ブリュースター角を利用した偏光子
  • 写真撮影:水面の反射を抑制

🔢 全反射

屈折率の高い媒質から低い媒質へ入射するときに起こる現象です。

臨界角: θ_c = arcsin(n₂/n₁)

θᵢ > θ_c のとき全反射が起こる
(ただし n₁ > n₂ の場合)

🌊 全反射の応用

  • 光ファイバー:光を内部に閉じ込めて伝送
  • プリズム:光の進路を変える
  • ダイヤモンド:内部で全反射して輝く
  • 蜃気楼:大気の密度差による全反射

📊 練習問題

問題1:空気(n₁=1.0)からガラス(n₂=1.5)への入射でブリュースター角を求めよ。

解答:
tan θ_B = n₂/n₁ = 1.5/1.0 = 1.5
θ_B = arctan(1.5) ≈ 56.3°

答え:56.3°
問題2:水(n₁=1.33)から空気(n₂=1.0)への臨界角を求めよ。

解答:
sin θ_c = n₂/n₁ = 1.0/1.33 ≈ 0.752
θ_c = arcsin(0.752) ≈ 48.8°

答え:48.8°

⚠️ 実用上の注意点

⚠️ 実際の反射・屈折
• 表面の粗さで散乱が生じる
• 周波数依存性(分散)がある
• 損失のある媒質では複素屈折率
• 多層構造では多重反射を考慮
• 非線形効果(高強度では)

🔥 テストで狙われるポイント

  • 4つの境界条件(接線:E、H連続、法線:D、B連続)
  • スネルの法則:n₁sinθᵢ = n₂sinθₜ
  • ブリュースター角:tanθ_B = n₂/n₁
  • 臨界角:sinθ_c = n₂/n₁ (n₁ > n₂)
  • P偏波とS偏波の違い
  • フレネル係数の概念
  • 全反射の条件と応用