🌊 マクスウェル方程式とポアソン方程式の関係
🎯 この章で学ぶこと
マクスウェル方程式からポアソン方程式がどのように導出されるのかを理解しよう!
電磁気学の根本原理と半導体工学での応用を結ぶ重要な関係性を学びます。
🌟 基本的な関係性の概観
🔗 両方程式の本質的な繋がり
マクスウェル方程式は電磁現象の最も基本的な法則であり、ポアソン方程式は静電場における特殊ケースです。
時間変化のない静的な状況では、マクスウェル方程式の第1式(ガウスの法則)が直接ポアソン方程式に帰着されます。
⚡ マクスウェル方程式の復習
第1式:ガウスの法則(電場)
$$\nabla \cdot \vec{D} = \rho$$電束密度の発散 = 電荷密度
第2式:ガウスの法則(磁場)
$$\nabla \cdot \vec{B} = 0$$磁束密度の発散 = 0
(磁気単極子は存在しない)
第3式:ファラデーの法則
$$\nabla \times \vec{E} = -\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}$$電場の回転 = 磁束密度の時間変化
第4式:アンペアの法則
$$\nabla \times \vec{H} = \vec{J} + \frac{\partial \vec{D}}{\partial t}$$磁場の回転 = 電流密度 + 変位電流
📝 ポアソン方程式の導出過程
🧮 ステップバイステップ導出
Step 1: マクスウェル第1式から開始
Step 2: 構成方程式を適用
線形等方性媒質では:
ここで $\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0$ は誘電率
Step 3: 電場を電位で表現
静電場では電場は電位の勾配で表せます:
Step 4: 組み合わせてポアソン方程式を得る
🎯 ポアソン方程式の完成!
🔍 各ステップの物理的意味
ガウスの法則の意味
電荷が存在すると、その周りに電場が発生し、電束線が放射状に広がる。この発散の強さが電荷密度に比例する。
積分形:閉曲面を通る電束 = 囲まれた電荷
構成方程式の役割
媒質の電気的性質を記述。半導体では誘電率が重要なパラメータとなり、材料によって大きく異なる。
- シリコン: $\varepsilon_r = 11.7$
- ガリウムヒ素: $\varepsilon_r = 13.1$
- 酸化シリコン: $\varepsilon_r = 3.9$
電位の導入
静電場では保存力なので、電位(スカラー量)で記述できる。これにより3次元ベクトル問題がスカラー問題に簡約される。
静電場は保存力場
🔬 半導体工学での特殊性
📋 半導体中の電荷分布
🎯 半導体特有の考慮点
半導体では、自由電荷と固定電荷が共存するため、電荷密度の表現がより複雑になります:
$p$: 正孔濃度(移動電荷)
$n$: 電子濃度(移動電荷)
$N_D^+$: イオン化ドナー(固定正電荷)
$N_A^-$: イオン化アクセプター(固定負電荷)
⚖️ 電荷中性条件との関係
📊 異なる領域での電荷分布
領域 | 電荷分布 | ポアソン方程式 | 解の形 |
---|---|---|---|
中性領域 | $\rho \approx 0$ | $\nabla^2 \psi = 0$ (ラプラス方程式) | 線形関数 |
空乏層 | $\rho = \pm qN$ (一定) | $\nabla^2 \psi = -\frac{qN}{\varepsilon_s}$ | 2次関数 |
反転層 | $\rho = \rho(x)$ (変数) | $\nabla^2 \psi = -\frac{\rho(x)}{\varepsilon_s}$ | 数値解 |
🎛️ 境界条件と連続性
🔄 境界での連続性条件
異なる材料の界面では、以下の連続性が成り立ちます:
1. 電位の連続性
2. 電束密度の法線成分の連続性
ただし、界面に面電荷 $\sigma$ がある場合は:
🌊 時間依存性の考慮
⚠️ 準静的近似の限界
ポアソン方程式は静的な状況での近似です。時間変化が関わる場合は完全なマクスウェル方程式が必要になります。
準静的近似が成り立つ条件:
- 変化の時間スケール $T \gg \frac{L}{c}$ ($L$:系のサイズ、$c$:光速)
- 変位電流 $\frac{\partial \vec{D}}{\partial t} \ll \vec{J}$
- 電磁波の伝搬効果が無視できる
📐 次元解析による理解
🔍 各項の次元確認
ポアソン方程式:$\nabla^2 \psi = -\frac{\rho}{\varepsilon}$
項 | 次元 | SI単位 | CGS単位 |
---|---|---|---|
$\nabla^2 \psi$ | [V/m²] | V/m² | statV/cm² |
$\rho$ | [C/m³] | C/m³ | esu/cm³ |
$\varepsilon$ | [F/m] | F/m | esu²·s²/(g·cm³) |
$\rho/\varepsilon$ | [V/m²] | V/m² | statV/cm² |
✅ 左辺と右辺の次元が一致し、方程式の次元的整合性が確認できます。
🔧 実用的な解法手順
📋 問題解決の一般的ステップ
- 物理系の設定
- ジオメトリの決定
- 材料パラメータの確認
- 座標系の選択
- 電荷分布の決定
- ドーピング分布
- キャリア濃度分布
- 界面電荷
- 境界条件の設定
- 電位の境界値
- 電界の境界値
- 連続性条件
- 方程式の求解
- 解析解(単純な場合)
- 数値解(複雑な場合)
- 近似解(工学的推定)
- 結果の物理的解釈
- 電位分布の形状
- 電界の強度と方向
- デバイス特性への影響
🔗 他の方程式との関係
🌐 電磁気学・半導体物理の方程式体系
連続方程式(電荷保存)
$$\frac{\partial \rho}{\partial t} + \nabla \cdot \vec{J} = 0$$ドリフト・拡散方程式
$$\vec{J} = q\mu \rho \vec{E} + qD \nabla \rho$$キャリア輸送方程式
$$\frac{\partial n}{\partial t} = \frac{1}{q}\nabla \cdot \vec{J}_n + G - R$$これらの方程式とポアソン方程式を連立させることで、半導体デバイスの完全な数値シミュレーションが可能になります。
💡 重要なポイントのまとめ
🔥 覚えておくべき核心
- 基本関係: マクスウェル第1式 + 静的近似 → ポアソン方程式
- 物理的意味: 電荷分布が電位の曲率を決定
- 境界条件: 電位と電束密度の連続性
- 半導体特有性: 移動電荷と固定電荷の区別
- 適用限界: 準静的近似の条件
🎯 実用的なコツ
- 対称性の利用: 1次元、球対称、円筒対称の場合を使い分け
- 重ね合わせの原理: 線形方程式なので解の重ね合わせが可能
- グリーン関数: 点電荷応答から任意分布の解を構築
- 数値計算: 有限要素法、有限差分法の活用